綿合繊混紡キャンバスの検討
物価高による画材の高騰
2026年になりました!
今年、来年の制作を見据えて、この冬のうちに足りない画材を揃え、制作環境を整えることにしました。
そこでロールキャンバスの購入を検討しているのですが、最近は S100号の制作にハマっているので、幅145cmのものではサイズが足りません。
ロールキャンバスはだいたい140cm台か170cm台の2種類のサイズで販売されているので、今回は170cm幅の商品の購入を検討することにしました。
ところが、2年前に 3万5,000円ほどで購入していた同じロールキャンバスを調べてみると、現在の価格は12万円…とても手が出ない値段へと値上がりしていました。

恐るべし物価高…
以前買った175cm幅のロールキャンバスを、145cm幅でも事足りるF100号の制作にも気軽に使っていたことを、少しだけ後悔しています……。
天然繊維から、化学繊維混合キャンバスへ
これまでは 麻などの天然繊維のロールキャンバスを使ってきました。
しかしここまで価格が上がってしまうと、継続的に制作するための材料にここまでのコストを割き続ける現実的ではありません。
そこで今回は、化学繊維が混ざった「綿合繊混紡(めんごうせんこんぼう)」と呼ばれるロールキャンバスの購入を検討してみることにしました。
それまでの私の綿合繊混紡キャンバスのイメージは「作品が長持ちしない、長期の作品保存に向かないキャンバス」でした。麻100%は作品用、綿合繊混紡は習作用というイメージがあり、敬遠してきました。
長期保存を考えたときには、やはり「数十年後の劣化はどうなのか?」という不安が残ります。
綿合繊混紡キャンバスは長期保存に向いていない?
描いた絵が20~30年で劣化してしまうのは悲しいので、「作品を良い状態で残したいか、そうでないか」と問われれば、もちろん良い状態で残せるならそっちの方が良い、と思っています。
調べて見たところ、やはり綿合繊混紡キャンバスが長期保存に不利とされていました。
しかしその理由は「データ不足」によるものが大きいようです
経年変化の「実績」がまだ少ない
麻は500年以上の保存実例がある一方、1960年頃から普及し始めたポリエステルなどの化学繊維は美術用途としての長期経過データはせいぜい50年…美術に用いられてきた歴史が浅く、そのためデータが不足している、というわけです。
また、作品の修復においても同様で、裏打ち・補修など伝統的な修復技法が確立されている天然素材の作品とはことなり、 将来どう劣化するかが完全には予測できないため、評価が低い、というのが現状とのこと。むしろ最近では壊れ方が不可逆で、修復対応が難しいということがわかってきています。
確かに今後目に見えてくるデメリットは大きそうですが、私は50年大丈夫ならまぁ十分でしょう、という気持ちです。時代とともに経年変化するのも、過剰でなければ悪くないように感じます。
吸水性と描き心地
化学繊維キャンバスについて調べる中で、特に気になったのが 吸水性の違いです。
私は普段、
- 絵の具を 何層にも重ねる
- 序盤はペインティングナイフ主体
- 厚塗りが前提
という描き方をしています。
そのため「吸水性が違う」と言われても、正直なところ最初はあまりピンときませんでした。
吸水性が低い下地では
- 絵の具が布に吸い込まれず 表面に留まりやすい
- その分 発色が強く出やすい
- ナイフ跡がはっきり残りやすい
という特徴があります。 「色が沈んで発色が弱い」と感じる場面が増えていたので、
もし水分の吸われすぎが原因だったのであれば、今回のキャンバス素材の変更で、予想よりもプラスの作用が期待できるかもしれません。
一方で、筆跡は流れやすくなるため、 ジェッソで吸水具合を調整する工程が重要になってきます。
調べていくと、吸水性が低いから悪い、というわけでもなさそうです。
「吸水性が悪いと絵の具が食い込まず、うまくくっつかないのでは?」とも思ったのですが、どうも「吸水性が高い=よく絵の具がくっつく(剥がれない)」ということはなさそうです。
むしろ吸水性が高すぎると
- 油分が下地に吸われやすい(絵の具を固めるための油もなくなる)
- 結果として 割れや沈みにつながる
というリスクもあると分かりました。ちょっと吸い込みがあるくらいがベストなようで、麻キャンバスはすでにこれが整えられた状態で販売されており、綿合繊混紡キャンバスもジェッソで調整して問題なく使用できるようです。
厚塗りにとって大切なのは「下地」
今までは麻100%キャンバスだったのでジェッソでの下塗りはせず、そのままキャンバスに油絵具で描いていました。
しかし今後は綿合繊混紡のキャンバスを使用するのであれば、綿合繊混紡の使用感を麻に近づけるために下塗りの方法は学ぶ必要がありそうです。
厚塗りでは「布が絵の具を吸うかどうか」よりも、「下地が絵の具を支えられるかどうか」が重要
そのため、私のように厚塗りを前提にする場合は、下地は特に重要です。
調べた結果、今回試そうと思っているのは、
- アクリルジェッソを薄く3〜4回塗布
- 1回塗るごとに 軽く研磨
- 1層目はキャンバスに水分が持っていかれるため水分を足す(綿合繊混紡も綿を含むで多少は吸うはず)
- 最終層は 水を少なめにして凹凸を残すことで、油絵具の食いつきがよくなる
という方法。こうすることで 厚塗りにも耐えうる下地が作れそうです。
あくまで絵の具がキャンバスと接している際の使用感なので、制作の初期段階では描き心地に違いを感じても、何層も描き込んでいくうちに差は分からなくなりそうな気もします。
まとめ:これからの制作
5段階評価で比較する
| 評価項目 | 麻100% (×ジェッソ) | 綿合繊混紡 (×ジェッソ) | 綿合繊混紡 (○ジェッソ) |
|---|---|---|---|
| 描き心地(筆触の反応) | ★★★★★ | ★★☆☆☆ | ★★★★☆ |
| 厚塗り対応(支持力) | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
| 色の濃さ・深み | ★★★★★ | ★★☆☆☆ | ★★★★☆ |
| 張りの安定性 | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★★★ |
| 湿度・変形への強さ | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★★★ |
| コスト(価格満足度) | ★★☆☆☆ | ★★★★★ | ★★★★★ |
| 長期保存性 | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ |
| 混色の乗りの良さ | ★★★★★ | ★★☆☆☆ | ★★★★☆ |
| 全体としての扱いやすさ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
長期保存の不安さえ目を瞑れば、問題ないどころかかなり良いコンディションで制作ができそうですね!
自分はペインティングナイフを多様して大型作品を描くため、キャンバスの張りが悪くなり、1枚の作品に対し①地塗り後②作品完成後の計2回はキャンバスを張り直していました。
また、キャンバスがたわんで木枠に干渉するので、中にプラダンを入れるなど、試行錯誤していたのですが、これらの手間が多少は改善されるかもしれません。
いくつかのデメリットも、下地処理をしっかりすることで
・麻と比べても十分高い表現力が出る
・厚塗りも問題なく描ける
のであれば、十分と判断し、購入を決意しました。
制作を続けていく以上、コストと向き合うことは避けて通れません。
今回の価格高騰は、
自分の制作環境や素材選びを見直す良いきっかけになりました。
実際に使ってみて、またレビューします
今回、実際に購入したロールキャンバスはこちらです。
使用感や描き心地、下地との相性など、
しばらく使ってみた上で、改めてレビュー記事を書こうと思っています。「化学繊維キャンバスって実際どうなんだろう?」
と気になっている方の参考になれば嬉しいです。




